GSIC

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国際共同研究

TSUBAMEを用いた大規模格子ボルツマン法の共同研究 (2013-現在)

ミュンヘン工科大学Informatics 専攻、Scientific Computing のProf. Dr. Hans-Joachim BungartzのグループとTSUBAMEを用いた国際共同研究(3年間)の国際交流協定を2013年11月に締結した。ミュンヘン工科大学の敷地に隣接したLeibnizスーパーコンピューティングセンターには、18,432個の Intel Xeon Sandy Bridge-EP プロセッサを搭載したスパコンSuper MUC があり、2013年11月のスパコンTop500では10位にランキングされている。主に大規模格子ボルツマン法に対して、通常のx86プロセッサによる実行性能とTSUBAMEのGPUによる実行性能の比較などを行う予定である。

TSUBAME のGPUによる大規模流体計算の共同研究 (2011-現在)

2011年からエルランゲン-ニュルンベルグ大学工学部・情報科学科の Ulrich Rüde 教授のグループと国際交流協定を締結し、TSUBAME の複数のGPUを使った大規模流体計算の共同研究を進めている。エルランゲン-ニュルンベルグ大学のグループは主に情報科学の観点から計算効率化を追求し、青木グループはより物理的な意味や数値計算精度・乱流モデルの観点から研究を進めている。エルランゲン・ニュルンベルグ大学のグループはBLUE GENE/P 等で数1000コアの並列計算に対して実績のあるコードをGPU計算に移植し、2012年3月にTSUBAME を用いて1000 GPUまでの実行性能を検証した。2012年8月1日~2013年1月31日にかけて、エルランゲン-ニュルンベルグ大学の卒業生を東京工業大学の博士研究員として雇用し、流体-構造連成問題や適合格子細分化の動的負荷分散における空間充填曲線の研究を進めた。その後、TSUBAMEのGPUが最新のものに置き換わり、それに合わせた最適化やステンシル・アプリケーションの DSL (Domain Specific Language) について、継続して共同研究を進めている。

GPU によるリアルタイム津波シミュレーション (2004-2011)

AIT(Asian Institute of Technology)との国際交流協定に基づき、GPU によるリアルタイム津波シミュレーションの共同研究を実施した。これまでのデータベースに基づいた津波予測ではなく、地震が発生してから津波伝播の浅水波方程式を解き、精度の良いリアルタイム津波シミュレーションを目指した。計算を大幅に高速化する必要があり、GPUの高い演算性能と低コスト性は導入に対する高いアドバンテージがある。2011年にはAITとKasetsart大学の共同プロジェクトで GPU クラスターをバンコクに導入するための検討を行った。バンコクが政情不安定になり日本からの渡航が制限され、GSIC 側からは2011年1月に一度バンコクを訪問しただけであったが、AIT側からは6月および11月に研究者が来日し、GPU 計算の効率化および海岸にマングローブ等の植栽がある場合の影響評価の方法について議論を行った。また、期間を通して共同で数回のワークショップを開催した。

世界遺産地域における地理情報システムの構築-危機遺産防止のために(2009-2011)

2007年12月にUNESCO世界遺産センターが実施した現地調査“Reactive Monitoring Mission to the Town of Luang Prabang World Heritage Property, Lao PDR”では、保存地域における違法建築の急激な増加が指摘され、早急な保護施策の実施がなければ、危機遺産に指定される可能性を示唆している。このような背景を受け、本研究では、ラオスルアンパバーン政府世界遺産局との連携のもと、GISを導入した地域開発への応用に注目し、持続可能な世界遺産地域開発、および後発途上国という条件を踏まえたGISの効果的な利用に関する研究を実施した。現地ワークショップを開催し、ルアンパバーン現地政府9機関からの代表者を含め情報発信の場として活発な議論が展開した。また、世界遺産登録15周年記念シンポジウムでは、GISを活用した10年の町並み変化に関する分析・考察を発表し、政府、援助機関を含むステークホルダーからは大変有意義な研究結果として賞賛された(トピックス記事参照)。また、新試行として、モバイルラーニングの活用に関する調査を実施し、現地の二大学の約400名を対象にモバイルツールの種類および活用法に関する情報を収集・分析した。調査結果は2013年2月にユネスコ教育主催で開催された”Mobile Learning Week”にて発表され、世界文化遺産保存の意識向上にモバイルラーニングを導入する手法に注目が集まった。更に、町並み景観を効果的にモニタリングするための手法として、3DCGとVRパノラマによる手法の比較検討を実施し、その結果、現地に効果的に応用できる手法としてVRパノラマが選択された。遺産保存地区のメインストリート1.5キロの30地点におけるVRパノラマ手法を含むモニタリングプロセス書が策定された。本研究は、今後、定期的に情報をアップデートすることにより町並みの変化を掌握するベースラインとして活用される。

発展途上国の世界遺産地域における持続可能な情報通信技術の応用に関する実践研究(2013-現在)

ラオスルアンパバーン政府世界遺産局との連携のもと、持続可能な世界遺産開発を実現するための情報通信技術を用いた包括的かつ効果的・効率的な施策についての実践的な研究を実施している。2013年度は、モバイルラーニングを活用した世界遺産に関する意識向上調査及び、世界遺産局の保有するauthorization databaseの改善を実施した。現地の大学生を対象とした世界遺産保存に関する意識向上のためのモバイルラーニング導入に関する調査分析に基づき、2014年2月には、ルアンパバーンにて「ICTを活用した世界遺産保存:意識向上週間」を開催し、多様なICTを活用した世界遺産管理の手法についてのワークショップを実施した。120名を超える学生・専門家が参加し現地メディアも取り上げるなど、注目が集まった。調査結果は2014年4月開催予定の国際学会にて発表された。ルアンパバーンが建築規制に使用しているAuthorization Databaseに関しては、現地調査に基づきユーザビリティーを向上させたプロトタイプが開発され、専門家を対象に試行された。世界遺産局の専門家(ユーザ)の意見を反映した上で、現在、本運用のための開発が進められている。

オープンソースソフトウェアの持続可能な導入に関する研究(2009-2010)

モンゴル教育省の評価・情報技術局との連携のもと、オープンソースソフトウェアの導入が途上国における情報教育分野の発展にどのように貢献できるかの調査に従事した。22年度は具体的には、ユネスコバンコク事務所情報技術と教育分野の専門家との協働のもと、アジアの国々の教育開発におけるベストプラクティス分析を実施し、ユネスコと共同開催の国際シンポジウム(モンゴル)にて発表した。また、持続可能な形でFOSSを導入する際の留意点を技術面、文化面、人材面など多方面から分析し、アジアの諸国で活用されている事例についても情報共有を行なった。現地に適した情報教育の導入は地域の総合発展に貢献するのみならず、情報へのアクセスの差から来る経済、教育分野での地域格差減少に貢献するツールとして期待されており、文部科学省のJapan Fund-in-Trustを活用しユネスコと共同で国際シンポジウム開催(カザフスタン)につなげた。

モンゴルにおける持続可能な教員研修のためのICT教材の開発と普及(2010-2012)

本研究は、文部科学省の政府開発援助ユネスコ活動費補助金「アジア・太平洋地域等における開発途上国の教育、科学又は文化の普及・発展のための交流・協力事業」の一環として実施された。モンゴルの初等教育分野においてICTを活用した教員研修用の教材を開発し、教員研修専門家及び小学校教員を対象とした教員研修を通じて新教材の試行・評価を実施した。教材開発には、モンゴル教育科学文化省情報技術・評価局および、モンゴル教育大学の教員チームが現地カウンターパートとして参加し、東京工業大学チームと共に、ビデオCD、Web等を含めた初等教育6教科の教員研修用ICT教材の開発に従事した。教材試行を含めた教員研修はカスケードモデルを活用し、首都ウランバートルでの専門家研修には25名の地方政府教育文化局の教員研修担当官および、ICT担当官が参加した。その後、専門家研修の参加者が講師と共に、ウランバートル(都市)、ツゥブ県(中部)、バヤンホンゴル県(西部)の3箇所で地域教員研修を実施し、計70名の小学校教員が研修を受けた。本研修では、新教材について研修参加者が評価を行ない、使用者の意見をフィードバックすることで教材の改善に取り組んだ。二年目の教材開発には、上記の専門家が現地カウンターパートとして参加し、東京工業大学チームと共に、ビデオCD、Web等を含めた初等教育5教科の教員研修用ICT教材の開発に従事し、計90名の小学校教員が研修を受けた。本研修では、FOSSを活用した教材作成用のプログラムが導入され、ドルノゴビ県、ツゥブ県、バヤンホンゴル県の3箇所して試行された。なお、開発された8教科(11科目)のICT教員研修教材はガイドライン書(手引書)と共に全国の小学校708校に配布され、その後のJICA草の根パートナー型援助協力に繋がった。

モンゴル における地方小学校教員の質の向上-地域性に即したICTを活用した教材開発を通じて(2012-現在)

基礎教育のアクセスの拡大は国連ミレニアム開発目標において重要項目とされており、途上国が真剣に取り組んでいる課題である。1990年の民主化後、都市と地方の教育格差が拡大しているモンゴル国においても例外ではない。山口・高田研究室は、2004年より、モンゴル教育科学省との連携のもと、情報技術を駆使した教育機会の提供・教育の質の向上を目指した 共同研究および協働プロジェクトを実施している。2012年3月からは、JICAと連携し、草の根技術協力事業草の根パートナー型プロジェクト「モンゴル における地方小学校教員の質の向上-地域性に即したICTを活用した教材開発を通じて」を開始した。本年度はモンゴル21県とウランバートル市を対象に教員研修担当専門家および、各県代表の教員94名にICTを活用した教材開発に関する研修を実施し、カスケードモデル型手法を活用しすることで、全国で1,650名の教員が研修を受けるに至った。二年目は、モンゴル21県とウランバートル市を対象にICTを活用した教員研修教材の全国コンテストを実施し、ホブド県(西部)、バヤンホンゴル県(ゴビ地域)、ブルガン県(北部)、ヒンティ県(東部)、ソンギノハイルハン地区(ウランバートル市)の5地域が選出された。来年度より、各地域6教科、全30からなる教員件教材の作成に取り掛かる。教材作成には各地域36名の教員・専門家が参加し、50名の教員を対象に教材の改良を実施する。同時に、モンゴルの小学校教員のICTスキルの調査に関する共同研究の一環として、5県におけるアンケート調査を実施し、現在データ分析を進めている。

アジア10カ国における教育政策における21世紀型スキルの比較研究と参加型データベースの構築(2013-現在)

本事業では、近年ユネスコやOECDなどの国際機関がこれからの教育政策・改革において重要であると提唱している「21世紀型スキル」に注目し、ユネスコバンコク事務所との連携のもと、アジア地域10カ国の基礎教育政策を「21世紀型スキル」の観点から比較分析した。比較分析は多面的な要素から構成され、第一に、ユネスコが開発している教育政策分析フレームワークを活用し、各国の教育政策における「21世紀型スキル」に関する分析を通じて国別レポートを作成した。更には、教育現場の教師、生徒からの意見を反映させるために「21世紀型スキル」に関するe-コンテストを実施し、エッセイ、ビデオ、フィルムなどの媒体によりウェブ上で意見を収集した。世界20カ国以上から160に上るエッセイ、ビデオが寄せられ、優秀作品は、ユネスコバンコク事務所・東工大学術国際情報センターより表彰された。2013年10月には、ユネスコバンコク事務所・東工大学術国際情報センター共催の国際シンポジウムが開催され、アジア太平洋地域11カ国40名の専門家が出席し、各国の分析報告及び事例紹介が実施された。また、本取り組みでは、参加型教育政策データベースを構築し、上記の国別レポート、事例集、e-コンテストで収集した意見を含めたコンテンツの積極的な情報発信を目指した。アジア太平洋地域の教育開発を網羅するユネスコバンコク事務所の特性を生かし、そのネットワークを活用することで、その成果が広く普及されている。

カンボジア・プノンペン市の3次元地質・地盤情報データベースの構築と可視化(2013-現在)

地盤工学・地質学分野において、地下の地質構造区分を把握することは重要な意義を持つ。最近では、カンボジアの首都プノンペン市のインフラ開発に向けて、地盤調査の数が増加している。ボーリングによる地層の形成や土の性質などの調査は多数行われているが、得られた地質データに基づいた、プノンペン市の3次元地質構造モデルの構築は、実施されていない。本研究は、地下水モデル化システム(GMS)を用いて、1,200箇所以上から収集した既存のボーリングデータによるプノンペン市の地盤情報データベースを作成することを目的とした。GMS上で集積した工学的性質を概念で表現するとともに、3次元的に地下構造を可視化することにより、プノンペン市における地質情報の全体像を視覚的に捉えることができた。また、本研究で活用したデータ処理は、プノンペン市初の3次元統合化地質・地盤情報データベースであることに加えて、より正確な地質学的解釈の根拠、いくつかのせん断強度との経験的相関 を提案している。

タイ東北部における稲の反射スペクトルと土壌の電気伝導度の関係(2012-現在)

本研究では、宇宙システム開発利用推進機構の協力のもとに、ハイパースペクトルセンサを用いて収集した野外調査データから、稲穂・個葉・群落の分光反射率と土壌塩分との相関関係を得るための波長帯を検出することを的としている。タイ東北部の主な塩害地として知られている4県を対象として、健全な水稲から特に深刻な塩害被害が生じた水稲まで様々な塩分濃度を含む、水稲地でハイパースペクトル計測を実施した。測定した反射スペクトルを平均して解析に使用した。植物の状態計測については、植生種、植生密度、葉面積指数(LAI)、草丈、穂の長さを測った。反射スペクトルで塩類集積被害度の推定に広く利用されてきた正規化植生指数(NDVI)はEC値との相関関係が総じて低い欠点があるため、本研究では、正規化分光反射指数(NDSI)を採用した。 本学のスパコンTSUBAME2.5を使用してMATLABによる並列処理を行い、対象波長範囲を抽出するための高速演算を実現した。その成果としては、特定の波長領域に稲の反射スペクトルに関する塩害の被害を受けた稲作地情報を反映していることを実証するとともに、効率良く推定できる簡易検出法を確立した。

タイ北部ラムパーン県のメモ炭鉱における地下水処理(2010-2013)

タイ北部ラムパーン県のメモ炭鉱が直面する工学的問題の一つとして、地下水の影響を受ける掘削に伴うヒービング(盤ぶくれ)が挙げられる。掘削底面を持ち上げる地下深部帯水層の高い圧力を制御するために行われる地下水の排水対策が課題となっており、坑内にある集水井 による現在の総排出量は 約9000~15,000m3と推定される。既存の地下水は、自然由来のヒ素が含まれているため、沈殿池および人工湿地に排出する前に、水処理所にて一日当たり12万m3の水を圧送し、地下水中のヒ素の濃度を低減・排除する。メモ鉱山では、地盤安定性と地下水環境に関する問題に対して、2010年から2013年の間に行われてきた地下水処理施設への現地訪問の報告を目指している。水処理施設は、汚染水から確実に95%のヒ素成分を除去することができる高い処理効率を実現している。国内基準に従って準拠するいくつかの水質特性を管理するため、タイ発電公社は、処理後のヒ素濃度が基準を下回ったままであることを表明している。 なお、本調査研究(2010年~2014年)はアジア研究教育拠点事業の助成を受けたものである。

淡水貝類化石の破砕性の力学特性 2011-2012)

本研究では、タイ北部亜炭鉱における坑内露天掘り採掘の影響から、現場付近に存在する大規模な淡水貝類化石を保護するために、斜面安定性を定量的に評価することを目的としている。このタイ北部亜炭鉱は東南アジア最大の亜炭田であり、巨大なタニシ化石群集が堆積している。発見された化石層は保存状態が良く、その規模も世界第2位と大きなものになっている。したがって、重要なエネルギー資源開発と貴重な地質遺産保護の間の競合問題が生じている。貝類密集層は、サンゴ礫混合土のように破砕を受けやすい地盤材料であり、工学的な問題を抱えている。タイ発電公社の技術者との現地調査による特有な地質学的特性に関するデータの蓄積を進めるとともに、予備実験の準備を行った。また、貝類化石が存在する斜面近傍の保護地域外にサンプリング位置を設定し、不撹乱試料および撹乱試料を採取した。粒子破砕の程度を定量的に評価するため、せん断・圧縮特性ならびに物理的性質に関する室内実験を開始した。その結果、乾燥・湿潤状態は粒子自体と表面の脆さに大きな影響をもたらすことが分かった。このような珍しい研究は、地盤工学に役立たせるだけではなく、地質学との連携を可能として、1300万年前の貝類化石丘の保護対策への積極的な寄与を果たせるものと期待できる。

法尻掘削におけるアーチ効果に基づく新たな炭鉱採掘手法(2010-2013)

鉱山工学の分野では、切土法面に形成されるアーチ効果を法尻掘削の設計に導入することにより、斜面下部の掘削における安定性が確保されるとされ、大掘削幅の予測が必要とされている。締固め土 によって切土法面の模型を作成し、側面を拘束した状態に対して模型の勾配、厚さ、幅及び長さを変化させて、1G場で模型実験行い、不安定化に及ぼす影響を検討した。さらに最大掘削幅の理論的予測式を検証するため、遠心模型実験と比較して、十分な実用性が得られることが確認できた。この研究成果の実用化を実現するため、タイ北部のメモ炭鉱における実際の現場に導入し、最大静水圧と完全飽和条件にある斜面の安全率を評価して算出された限界幅まで斜面法尻掘削が行われた。結果として、実現可能な有用な炭鉱採掘手法の開発に加え、大規模な掘削、残土の輸送、投棄サイト等の問題解決に繋がることで、莫大な費用の軽減と時間の節約をもたらす結果となった。

微小ひずみ領域における土の剛性の非線形性(2010-2011)

剛性のひずみ依存性を考慮した地盤材料構成式に関する研究は、チュラロンコン大学とバンドン工科大学との共同研究による。バンドン工科大学の教員が、AUN/SEED-netから短期研究プログラムの支援を受けて、平成23年7月に準客員研究員として、本センターに着任し、ハイパープラスチックシティ枠組みに関する地盤構成則の動的数値解析手法を開発するとともに動的解析プログラムの評価を実施した。ハイパープラスチック定式化は、大ひずみから微小ひずみレベルまで跨る剛性のひずみ依存性を記述することが可能である。微小ひずみでの非線形剛性は、材料の非線形応答を満たすために、応力の累乗関数で表すことができる。このような基礎的研究は、地盤工学分野における耐震設計や施工に役立たせ、防災への積極的な貢献を果たせるものと期待できる。

「顧みられない熱帯病」の寄生原虫治療薬の探索(2012年-現在)

世界には未だ治療満足度が低く、更なる医薬品の貢献が求められるアンメットメディカルニーズの高い疾患が数多く存在し、いわゆる顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Diseases、以下「NTDs」)(注1)も地球規模での保健医療問題と位置づけられ、国家間を超えた取り組みが行われている。本共同研究は、東京工業大学、アステラス製薬、東京大学、DNDi(Drugs for Neglected Diseases initiative)等を中心とした、国際コンソーシアムによるオープンイノベーションにより、NTDsの中でもリーシュマニア症、シャーガス病、アフリカ睡眠病といった疾患を引き起こすトリパノソーマ寄生原虫治療薬探索を行うことを目的としている。現在までに、疾病を引き起こす原因となる創薬候補タンパク質データベース(iNTRO DB)の作成、またそのデータベースより絞られた候補タンパク質に対するスーパーコンピュータTSUBAME2.5を用いたin silico創薬、生化学実験による実験等を行い、疾病の原因となるタンパク質の機能を阻害する薬候補化合物を多数得るに至った。今後は、X線結晶解析によるタンパク質と薬候補化合物の構造決定を行い、トリパノソーマ原虫自体に対しても殺原虫活性を持つかの確認を進めていき、グローバル規模の保健医療問題の改善に寄与していく。
(注1)主に開発途上国の熱帯地域、貧困層を中心に蔓延している寄生虫、細菌感染症のことで、WHO で焦点を当てている 17の疾患群*において、世界で 10億人以上が感染していると言われている。未だ安価で安全な治療薬を入手できないために、人々の生命を脅かす健康問題に留まらず、経済活動の足かせ・貧困の原因ともなっている。

タンパク質-RNA複合体の認識メカニズムの解明 (2011年-現在)

本研究は、インド工科大学マドラス校と連携し、構造解析、分子動力学シミュレーション、生化学実験による結合特異性の解析を通じて、生物種(例えば、大腸菌、ウシ、高度高熱菌)間に特異的なタンパク質-RNA複合体の認識メカニズムを解明することを目的としている。日本とインドのチームは、それぞれタンパク質の折り畳み、安定性、結合について研究を行い、タンパク質複合体の安定性と結合認識を理解するアルゴリズムと手法の開発を行ってきた。本研究では、国内外でも特定のタンパク質-RNA複合体に注目して行う解析を、タンパク質-RNA複合体をデータベースから網羅的に集積し、特に異なる生物種由来の同一のタンパク質-RNA複合体を含めて対象とすることに本研究の特色があり、結合部位における結合傾向 (Binding propensity)、疎水性指標(Surrounding hydrophobicity)、長距離接触性(Long-range order)、配列保存性(Conservation score)、凝集傾向(Aggregation prone regions)、分子動力学シミュレーション結果、生化学実験のデータを統合し、データベース作成を行うことが独創的である。 既に、1)タンパク質-RNA複合体のデータベース作成、2)複合体の結合部位における結合傾向 (Binding propensity)、疎水性指標(Surrounding hydrophobicity)、長距離接触(Long range order)、配列保存性(Conservation score)、凝集傾向(Aggregation prone regions)の計算が終了している。今後は3複合体の結合の詳細に関する分子動力学シミュレーションによる解析、4)計算機による解析と生化学実験により得られた結合情報の統合に関して、2014年度よりTSUBAME2.5を用いた分子シミュレーションを実施する予定で有り、生物種間に特異的なタンパク質-RNA複合体の認識メカニズムの解明を目指している。

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