東京工業大学(以下,東工大)・学術国際情報センターの青木尊之教授らと(株)ケイ・ジー・ティーは,今年4月に東工大・学術国際情報センターに導入したスーパーコンピューティング・グリッド「TSUBAME」(*1)を使って,世界最大規模のデータから可視化画像を作成した。(図)
今回画像化したデータは,東工大大学院理工学研究科の店橋護助教授が計算した「空間発展乱流混合層 (Re=1100) におけるコヒーレント微細渦の中心軸分布」で,これを(株)ケイ・ジー・ティーの並列可視化ソフトウエアAVS/Express PCEを使って,197億個のポリゴン (三角形) で表現し,高解像度の画像 (3840x2160) を並列処理により47秒で作成した。画像化にはTSUBAMEの2000 CPU コアを利用した。
これは世界的にトップクラスの大規模データであり,少なくとも国内では最大である。現在,2010年を目標に文部科学省では京速計算機を開発しているが,これは高速処理をもたらすと同時に,莫大なデータ量の計算結果を出力することになり,その分析処理が課題になると考えられている。今回,大規模並列計算機による高解像度の画像生成法が,その解決方法の1つとなることを実証した。また,スーパーコンピューティングだけでなく,医療用のCT装置の高解像度化も進んでおり2000x2000x2000解像度の3次元CTデータも実用化が始まっている。現在,このよう大規模医療データはボリュームレンダリング(*2)という手法で画像化しているが,医学・工学の連携には医療用データから3次元形状を取り出すことが必要で,トライアングルの生成とその画像化は重要である。
これにより,従来は詳細な計算や計測をしながらも確認できなかった大量の情報を,画像化することにより目視による定性的な分析が可能となり,これまで見逃していた現象や病気の発見が可能となることが期待される。
東京工業大学が構築したスーパーコンピュータシステムの名称。2006年4月3日より運用が開始され,2006年6月時点でTop500®で世界第7位,日本国内で第1位の演算性能を誇る。
総合演算性能は85TFLOPS(ピーク時),
総合メモリ容量21.4テラバイト,ディスク総合容量 1.1ペタバイト。
計測データや計算データを立方体の集合と考えることで,面データを生成することなく,直接3次元情報を2次元画像に変換する手法。面データを生成する方法に比べて,メモリの消費量が少なく,計算も速いので大規模なデータの画像化に利用される。しかし,工学上重要な3次元形状を生成しないので,例えば,3次元CTで計測した情報から,骨を取り出して応力計算を行うような医工連携では利用できない。