国立大学法人 東京工業大学 (学長 相澤益男) (以下「東工大」) は,国内最高の総演算性能を有するスーパーコンピューティング・グリッド(*1)の導入を決定し,学術国際情報センター (センター長 酒井善則) が平成18年4月の導入に向けて構築を進めています。
今回のシステムは,日本電気㈱(以下「NEC」)によって落札され,AMD Opteron™を1万コア(*2)以上搭載した64ビットSun Fire™ x64サーバのクラスタとリナックスOS,サン・マイクロシステムズ社とNECのストレージ装置,NECのシステムインテグレーション(SI) ノウハウ,ClearSpeed社のSIMD(*3)アクセラレータ(*4),Voltaire社のInfinibandネットワークを組み合わせて構築されます。本システムは,東工大の学術国際情報センター 松岡聡教授が中心となって整備を進める「東工大キャンパスグリッド」の中心に位置づけられ,x64(*5)プロセッサベースのクラスタ計算機としては世界最大となり,かつ85テラフロップスの総合ピーク(理論最高)性能は日本最速となります。システムの運用の開始直後の2006年の晩春までにはSIMDアクセラレータをさらに増設し,処理性能を100テラフロップス以上に高め、加えてNECのベクトル計算機の補完により,従来型のアプリケーションのサポートを行う「ハイブリッドスーパーコンピュータ」を実現する計画です。
さらに,本システムは21テラバイト以上のメモリと,1.1ペタバイトのハードディスクストレージを有し,米国以外のすべてのシステムに勝る性能を誇るだけでなく,大学内のみならず産学や国際連携等おける広範な利用をもたらす新たなスーパーコンピュータの利用モデルを築くことが期待されます。本システムの導入により,本学がアジアにおけるスーパーコンピューティング技術・グリッド技術の盟主として認知され,リーダシップを発揮することができます。さらに文部科学省において国家基幹技術プロジェクトとして検討が進められている10ペタフロップス(毎秒1京回の浮動小数点演算)超級スーパーコンピュータの実現に向け,ソフトウェア,アプリケーション,アーキテクチャ等の研究面でも,積極的に貢献していく所存です。
本システムの圧倒的な計算性能は,現在,東工大で進められている電磁流体ダイナモの計算による地磁気変動の将来予測(*6),計算化学による生体物質の構造機能予測解析(*7),タンパク質の折り畳み問題へのバイオインフォマティクス手法の応用(*8),災害・防災・安全シミュレーション(*9),ナノサイエンス分野におけるカーボンナノチューブのシミュレーション(*10),といったさまざまな分野の研究プロジェクトにおいて複雑な問題の解決に活用されます。さらに,今後の産学連携プロジェクト・国際連携プロジェクトなどにおいても,文部科学省の「超高速コンピュータ網形成プロジェクト(National Research Grid Initiative; NAREGI(*11))」で開発されるミドルウェアを通じた活用・ナショナルグリッド基盤への貢献が予定されています。
グリッドは広域ネットワーク上の計算,データ,実験装置,センサ,人間などの資源を仮想化・統合し,必要に応じて仮想計算機 (Virtual Computer) や仮想組織 (Virtual Organization) を動的に形成するためのインフラである。
1つのシリコン基板(ダイ)やLSIパッケージ内に複数のCPU単位を収めるようになり,単一CPU機能単位の呼称として「コア」が使われるようになった。デュアルコアプロセッサでは1つのLSIパッケージ内に2つのCPU機能単位が含まれている。
計算機において1つの命令で複数のデータを扱う処理方式。ベクトル計算機やデジタルカメラ画像処理に使われるDigital Signal Processor(DSP)もSIMDの一種である。最近ではIntel社のマイクロプロセッサに内蔵のSSEやPlayStation 2のEmotion Engineなどのマルチメディア拡張機能もSIMDの応用である。
コンピュータなどの特定の機能や処理能力を向上させる機構。ソフトウェアをハードウェアで実装したり,特定の目的の性能向上を目指したハードウェア等がある。身近な例ではパソコンの画像表示速度を向上するグラフィックスアクセラレータがある。
通常のPCに用いられているプロセッサの命令体系の64ビット版命令拡張。"x86-64", "EM64T","AMD64" とも呼ばれる。
「超高速コンピュータ網形成プロジェクト(National Research Grid Initiative:通称NAREGI)」は文部科学省が進めるプロジェクトで,2003年からスタートし,広域分散型の最先端研究教育用大規模計算環境(サイエンスグリッド環境)を実現するために,世界標準に準拠した実運用に耐える品質のグリッド基盤ソフトウェアの研究開発を目的とする(http://www.naregi.org/)。
なお,本件について,11月下旬に本学で報道各社向けのプレスセミナーを開催する予定であり,詳細は後日別途通知する予定です。
Sun,Sun Microsystems,サンのロゴマーク,Sun Fire は,米国 Sun Microsystems, Inc. の米国およびその他の国における商標または登録商標です。AMD,Opteron,AMDロゴ, AMD Opteronロゴとそれらの組み合わせは,Advanced Micro Devices, Inc. の商標または登録商標です。 その他本文に記載されている製品名,商標および登録商標はそれぞれ各社の登録商標です。