マルチフィジックス血流動力学シミュレーション
Massimo Bernaschi (IAC, National Resource Counsil, Italy)
松岡聡 (東京工業大学学術国際情報センター)
背景と概要
動脈硬化をはじめとする心臓血管の疾病を深く理解するには,血液循環を詳細に理解する必要があります.しかし詳細に現実的なサイズのシミュレーションを行うためには,物理モデリングの分野においても高性能計算の分野においても解決するべき課題があります.たとえば現実的な血流動力学のモデルは,血管の複雑な形状に対応できる必要があり,その形状は心拍の影響でも変化します.そして血しょうなどの流体と,赤血球(RBC)・白血球をはじめとする粒子の両方を扱える必要があります.過去の流体・粒子双方のシミュレーションは毛細血管などを対象としており,心臓血管などに対応するにはより多くの計算資源が必要となります.この研究では,人間の心臓血管を対象としたマルチスケールシミュレーションを,東工大TSUBAME2.0スパコンの4,000GPUを用いて行いました.解像度は5cmから10μmの範囲で,約10億ノードの流体と約3億粒子の赤血球の計算を行います.